official髭男dismの音楽に自然と引き込まれる理由
Official髭男dismの楽曲を初めて聴いたとき、「なぜか最後まで聴いてしまった」という感覚を持つ人は少なくありません。派手なサウンドでもなく、奇抜な展開があるわけでもない。それでも、曲が終わるまで耳を離せない。その理由を丁寧に見ていくと、音楽の中心にいる藤原聡の存在が浮かび上がってきます。
ボーカルとして注目されがちな藤原聡ですが、彼の音楽的な役割は歌だけではありません。鍵盤に触れた瞬間から、楽曲全体の流れや空気が整い、バンドの音が一つの方向へ静かに向かっていきます。
髭男の楽曲が持つ「聴きやすさ」や「入りやすさ」は、単なるポップさではなく、音の配置や間の取り方によって生まれています。その中心で機能しているのが、藤原聡が奏でるピアノです。
音を足すことよりも、削ることを選ぶ。その判断の積み重ねが、聴く側に余白を残し、感情を重ねる余地を生んでいます。
藤原聡が音楽の中心で果たしている役割
official髭男dism藤原聡は、単に歌が上手いフロントマンという存在ではありません。作り手として、そして演奏者として、楽曲全体を俯瞰して見る視点を持っています。その視点が最も表れているのが、鍵盤に向かうときの姿勢です。
藤原聡の演奏には、「ここで目立とう」という意識がほとんど感じられません。むしろ、曲が自然に流れるために何が必要かを常に優先しています。
歌が語るべき部分では音を抑え、感情が膨らむ場面ではさりげなく支える。その判断は感覚的に行われているようでいて、実際には非常に整理されています。
髭男の楽曲が「うるさく感じない」「情報量が多すぎない」と言われる背景には、この役割分担の明確さがあります。藤原は、ピアノを通して曲の交通整理をしているとも言えるでしょう。
ピアノが作る楽曲全体の流れと温度
藤原聡が鍵盤から生み出す音は、楽曲の温度を決める役割を担っています。冷たくなりすぎず、熱くなりすぎない。その絶妙な温度感が、official髭男dismの音楽を長時間聴いても疲れにくいものにしています。
強く叩けば感情が伝わるわけではなく、音を詰め込めば盛り上がるわけでもない。藤原聡はそのことをよく理解しており、あえて控えめなタッチを選ぶ場面が多く見られます。
その結果、楽曲には常に呼吸できる空間が残り、聴く側は構えずに音楽と向き合うことができます。
ピアノの音が前に出すぎないからこそ、バンド全体のアンサンブルが自然にまとまり、曲としての一体感が生まれます。
official髭男dismの楽曲で感じる「間」の心地よさ
音楽において、鳴っている音と同じくらい重要なのが「鳴っていない時間」です。髭男の楽曲には、この間の使い方が非常に丁寧に組み込まれています。
藤原聡が鍵盤から手を離す一瞬。
次の音が来るまでのわずかな沈黙。
その空白があることで、聴く人は無意識のうちに次の展開を待つ姿勢になります。
この間があるからこそ、次に鳴る音が意味を持ち、感情の動きが生まれます。ピアノが常に鳴り続けていたら、この効果は生まれません。
藤原聡は、音を出さない選択が、音を出すことと同じくらい重要であることを、演奏で示しています。
藤原聡が大切にしている感情を導く音の選び方
藤原聡の演奏には、感情を操作しようとする強引さがありません。悲しさを強調しすぎることもなく、喜びを過剰に演出することもない。その代わり、聴く側が自分の感情を重ねられる余地を残しています。
鍵盤から鳴る音は、感情を「説明」するものではなく、「きっかけ」を与える存在です。
聴く人は、その音を受け取ったあと、自分の経験や気持ちを自然に重ねていきます。
この距離感があるからこそ、髭男の楽曲は年齢や立場を問わず、多くの人に受け入れられているのかもしれません。ピアノは前に出すぎず、それでいて確実に感情の流れを支えています。
藤原聡のピアノが記憶に残り続ける音の正体
楽曲を聴き終えたあと、ふとした瞬間に思い出されるのは、派手なフレーズよりも、静かに鳴っていた音であることが多いものです。
髭男の楽曲でも、あとから思い出されるのは、藤原聡が奏でていたピアノの響きであることが少なくありません。
サビに入る直前の一音。
曲が終わる前に置かれた控えめな和音。
それらは強い印象を残そうとするものではありませんが、時間が経つほど記憶に残ります。
その理由は、音が感情と一緒に記憶されているからです。
藤原聡のピアノは、音楽を一度きりの体験にせず、聴いた人の中で何度も再生される存在として残り続けています。
藤原聡の演奏に注目して聴きたい曲として、まず挙げたいのが
Pretender です。
静かに始まる鍵盤の音が、
楽曲全体の感情の方向を
やさしく示してくれます。
続いて I LOVE… では、
歌を包み込むような音の配置が印象的で、
間の使い方にも藤原らしさが表れています。
さらに 宿命 では、
控えめながら芯のある音が、
楽曲に静かな力を与えていることが伝わってきます。

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